科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

医学部裏口入学というパンドラの箱、オウム真理教事件の謎

2018年7月10日〜2018年7月16日

★Global Survey of Scientists
https://statisticalresearchcenter.aip.org/cgi-bin/global18.pl

★科学者向けグローバルアンケート
https://statisticalresearchcenter.aip.org/cgi-bin/global18.pl?id=&stage=5&sesid=&language=5

 文科省局長と東京医科大学の事件は、パンドラの箱を開けてしまったようです。

★東京医科大
以前から不正合格か 受験生リスト一覧に
https://mainichi.jp/articles/20180713/k00/00e/040/259000c

 記事には不正合格が以前からあったようだという関係者と、そんなことはないはずだという関係者の声が掲載されています。おそらく、少数の関係者しか実態を知らされていないということでしょう。

 私立医大裏口入学に関しては、時々ブローカーが捕まっています。それらの事件は概ね詐欺事件で、ブローカーは合否に関与せず、受かれば私の口利きが効いたと言い、落ちればお金が足りなかったという話にするという感じでした。

 裏口入学が本当にあったとすれば、それがいつからなのか、そしてほかの大学でも行われていないのか、気になるところです。

 一方、寄付金の寡多が合否に堂々と関係するアメリカを引き合いに出して、お金で合格を買ってもいいのではないかという意見も見聞きします。

 私は、お金で合否が判断される制度は日本には定着しないだろうなと思います。

 昨今の大学入試の採点ミスに対する反応をみると、日本人が試験の公平性を強く求める傾向にあることが分かります。

 しかし、裏ではお金が合否を左右しているケースがあるわけで、だったら面にしてしまったほうがよい、という意見も分かります。

 一流大学の入学者に高所得者の家庭出身者が多いと言われて久しいわけで、実質お金で合否が決まっていると言えるわけです。

 ただ、アメリカの制度を表面的に真似ても仕方ありません。

 「グッドウィルハンティング」あるいは「ベイマックス」など映画で繰り返し描かれるように、才能を持った者に対しては、どんな人であろうとチャンスを与えるというのが、いわゆる「アメリカン・ドリーム」です。

 もちろんそんな綺麗事ではないことは分かりますが、一流大学に入れるのはいずれにせよ金持ち、という社会になってしまっては、絶望が広がります。

平成32年度(平成33年度入学者選抜)以降における入学者選抜方法の検討について
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_admission_method_02.html

民間試験「使用せず」優位
東大が3案 英語、新共通テストで
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33018480U8A710C1CC1000/

 2020年からの入試改革。民間業者のテストを利用するかしないか、さまざまな意見が出ています。

 そんななか、東大は民間試験を使用しない方向になりつつあるようです。

 民間試験に対する反対論には、お金があれば試験を何回も受けられるのに対し、お金がないと試験を受けにくいという不平等を指摘する声もあります。

 いずれにせよ、公平性に固執していた日本の大学入試の転換点が来ているように思います。

★井上死刑囚から勧誘された医師が明かす「オウム真理教事件受験エリートの末路」〈週刊朝日
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180711-00000089-sasahi-soci

 オウム真理教事件に関与した死刑囚たちに刑が執行されて二週間。

 豪雨被害のニュースにかき消された感がありますが、それでも関心は高く、様々な論評が出ています。

 私たちにとって関心が深いのが、なぜ医師や研究者が事件に加わり殺戮に加担したのかということです。これは、科学コミュニティが真摯に考え続けなければならない問題です。

 オウム真理教の信者の大半は医師でも研究者でもなく、また、キリスト教をはじめとする宗教を信仰する医師や研究者はいるわけで、何もオウム真理教が特別ではないとは思います。

 事件当時、「尊師のDNAのパワーの秘密を研究している」と言っていた信者をテレビで見て大きな衝撃を受けましたが、信仰と研究の両立は他の宗教の信者にとっても悩む問題でしょう。

 しかし、医師や研究者たちの行為が殺戮やテロに結びついてしまった点で、オウム真理教は他の宗教と異なります。医師は人を害する行為を厳しく戒めています。それでもテロを行なった理由は何なのか…

 気になるのは、自称「エリート」とされる医師、研究者の不遇感が事件に結びついたとの説です。

 一流大学を出て博士号を取ったり医師になったりした優秀な自分が、なぜ誰かの下請けのような仕事をさせられたり、モテなかったり罵倒されたりするのか…世の中おかしいのではないか。

 そんななか、あなたはとても素晴らしい能力をお持ちです、その力をプロジェクトリーダーとして思う存分発揮しませんか、それは社会に役に立つことなのです、天国ではモテまくります、などと囁かれたら…

 科学コミュニティはいまだ、自称「不遇なエリート」を放置していると思います。一義的には本人の問題ですが、そうした人たちがテロリスト予備軍にならないことも真摯に考えていく必要があるように思っています。

★平成29年度文部科学白書の公表について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/07/1406888.htm

★「平成30年版通商白書」をまとめました
http://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180710002/20180710002.html

★映画『劇場版 仮面ライダービルド Be The One(ビー・ザ・ワン)』とタイアップ!〜量子の力を信じて、君も天才物理学者に〜
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/07/1407035.htm

★学術振興会、社会科学系データを共有
世論調査など 海外にも公開、共同研究促す
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32970500T10C18A7CR8000/

★「腎疾患対策検討会報告書〜腎疾患対策の更なる推進を目指して〜」ついて
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000172968_00002.html

Citizen science, public policy
http://science.sciencemag.org/content/361/6398/134.summary

★科学者のツイートの浸透率はあるフォロワー規模を境に指数関数的に増えていく
https://gigazine.net/news/20180702-twitter-for-scientist/

★Science journals end open-access trial with Gates Foundation
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05729-2

★We Should Reward Scientists for Communicating to the Public
https://blogs.scientificamerican.com/observations/we-should-reward-scientists-for-communicating-to-the-public/

Why scientists should communicate hope whilst avoiding hype
http://blogs.nature.com/naturejobs/2018/07/06/why-scientists-should-communicate-hope-whilst-avoiding-hype/

 科学コミュニケーションの活動をどう評価すべきか、日本では未だ定まっていないように思います。

★研究支援者、止まらぬ雇い止め 「日本の科学力低下の一因」と指摘も
https://www.asahi.com/articles/DA3S13581314.html

 私のコメントも出ています。

★Top medical journal retracts papers by disgraced trachea surgeon
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05687-9

 先週既報。

★UK universities fall short on reporting misconduct investigations
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05697-7

★UK Politicians Propose New “Research Integrity” Watchdog
https://www.the-scientist.com/news-opinion/uk-politicians-propose-new-research-integrity-watchdog-64479

 イギリスの大学の研究公正に対する取り組みが批判にされされています。

★Petition Asks AAAS to Remove Fellows With Sexual Harassment Records
https://www.the-scientist.com/news-opinion/petition-asks-aaas-to-remove-fellows-with-sexual-harassment-records-64488

 AAASもセクハラに対する取り組みを求められています。

★ドイツの著明な研究所でのパワーハラスメント疑惑は、若手研究者を守るもっと良いシステムが必要なことを示している。
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05683-z

 Nature巻頭言。先週既報のマックスプランク研究所でのパワハラ問題。

★誰でも手軽に遺伝子操作!?
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2018/07/0709.html

 DIYバイオ。考えなければならない問題も出て来ています。

★Software beats animal tests at predicting toxicity of chemicals
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05664-2

New digital chemical screening tool could help eliminate animal testing
http://www.sciencemag.org/news/2018/07/new-digital-chemical-screening-tool-could-help-eliminate-animal-testing

 動物実験を完全になくすことに繋がるか…

★Foreign-researcher figures stress need for immigration reform before Brexit
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05632-w

★Biomedical charity places major bet on ‘bold’ research to win bigger payoffs
http://www.sciencemag.org/news/2018/07/biomedical-charity-places-major-bet-bold-research-win-bigger-payoffs

★China expands surveillance of sewage to police illegal drug use
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05728-3

★Chinese researchers to get more autonomy over lab spending
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05688-8

トランスジェンダーの学生受け入れ 事前申告で受験認める
お茶の水女子大
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32802390Q8A710C1CR0000/

群馬)県立女子大、トランスジェンダー受け入れ検討
https://www.asahi.com/articles/ASL7C45XCL7CUHNB009.html

★大半の科学者はそのキャリアにおいて、大きな成功の連続をランダムな時期に少なくとも1度は経験するらしい。
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05682-0

★New analysis of funding trends offers encouraging news for female investigatorsーwith caveats
http://www.sciencemag.org/careers/2018/07/new-analysis-funding-trends-offers-encouraging-news-female-investigators-caveats

★It's never too late to stretch your wings: Why I got a Ph.D. at age 66
http://www.sciencemag.org/careers/2018/07/its-never-too-late-stretch-your-wings-why-i-got-phd-age-66

 年齢にリミットはない!勇気付けられます。

★Overcoming PhD perfectionism
The most important thing a PhD will teach you is how and when to stop, argues Atma Ivancevic.
http://blogs.nature.com/naturejobs/2018/07/09/done-is-better-than-perfect-overcoming-phd-perfectionism/

★Universities should help junior researchers broaden their career prospects
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05656-2

 残念ながら日本ではいまだ研究者が研究以外のことをすることを制限するPIが多くいます。