科学・政策と社会ニュースクリップ

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笹井博士会見感想

以下感想です。

  • 論文作成の途中から加わった、論文の著者になるつもりはなかったが、なってくれと言われてなった、という説明が、あたかも、友達が写真送ったからと言ってグランプリを獲得したアイドルのように白々しく聞こえたが、人の内面なのでわからない。
  • それはともかく、論文のオーサーシップに深刻な問題を提起した。生データを見ず、論文の手直し等で責任著者や重要な著者になれる、「ギフトオーサーシップ」のようなことがあったということが分かった。責任著者になってくれ、と言われてなった、というのは、まさに「ギフト」ではないか。
  • 理研の研究リーダー採用プロセスと、若手リーダーの育成に深刻な問題があるのが分かった。
  • 実績がない、かつ異分野出身の若手研究者を「育成しよう」ということで採用したにも関わらず、その後は独立した研究者、PIとして扱い、指導等しなかったわけだが、なにをもって「育成」というのか。
  • 若山博士に小保方博士の育成と論文指導、実験指導の責任を押しつけた感がある。
  • 誰も全体像を把握していない論文がnatureに掲載されたことに驚きを感じる。
  • 論文撤回と、「STAP現象」が作業仮説に戻ったと認めた点は評価する。ただ、この程度の仮説はいくらでもある。
  • iPSとの比較の資料が、iPSを比較する意図がなかったとするのは納得いかない。結果的に社会の期待をあおり、それをつぶしたことは大きい。

笹井博士は、この問題の当事者ではなく、巻き込まれた、という意識が強いのだろうか(もちろん、心の内側はわからない)。ともかく、ある種の本音も語っていたようにも思う。ギフトオーサーシップは日常茶飯事ではないか。なんで自分ばっかり。もっと露骨な人もいっぱい知っているのに。手柄は自分、責任は他人(院生、ポスドクなど下位の研究者)なんて当たり前じゃないか。これは笹井氏のみならず、研究者の多くが感じていることかもしれない(しつこいようですが、人の内面はわかりませんので)。

問題の核心は、小保方博士に博士号を与えた教育、かつユニットリーダーにした採用プロセス、そして、研究業界でいわば日常になっているギフトオーサーシップあたり。このあたりを徹底検証しないと、事態は繰り返されるだろう。

【追記】
藤田保健衛生大の宮川剛教授とツイッター上で意見交換しました。

笹井博士会見が提起した論文のオーサーシップの問題

笹井博士がオーサーに加わるのに疑問は感じないのですが、研究論文のオーサーとは何か、著者はどこまで責任を負い、どこまで栄誉を受けるのか、問い直す時期に来ているのかなと思っています。ご意見いただけますと幸いです。