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最先端研究開発支援プログラム、課題決定遅れる理由

最先端研究開発支援プログラムの、若手・女性研究者等を対象とした支援策に関して、採択課題決定が遅れている。

昨年末サイエンスポータルが「遅れる若手・女性研究者対象の研究開発支援課題決定 」という記事を出したが、最近その理由が明らかになってきた。

日経BTJ記事「【特別無料公開】若手期待の最先端・次世代研究開発支援プログラム、採択者の年度内決定に暗雲、和田政務官が申請書の追加提出を示唆」によると、和田政務官がストップをかけているという。

その原因は、9月に科学技術政策担当の内閣府政務官に就任した和田隆志・衆議院議員にあるとされる。実際、2011年1月13日の記者会見で作業の遅延について聞かれた和田政務官は、「プロジェクト自体を駄目だと言っているのではなく、誰に何をやってもらうかをきちんと決める必要がある。現段階では、その判断をするための材料が足りない」と発言。さらに「足りない材料とは何か」との質問に対して、「一般国民が読んで研究内容が分かるような書類の提出を、5600人すべての応募者に要請しようと考えている」と答えた

科学新聞2011年1月14日号も、以下のように報じている。

関係筋への取材によると、研究費の積算が不十分だということで、和田政務官がストップをかけているという。例えば、海外出張費を4年間で100万円で積算しており、どこに何回行くかが明確になっていない、ということを問題視しているという。

科学コミュニティからは懸念の声があがりはじめている。

以下、twitter上の声をまとめてみた。

最先端研究開発支援プログラム、課題決定遅れに対する反応

大型競争的資金の採択スケジュールの大幅な遅延は、国際連携・レピュテーション上もマイナス。海外国費留学院生や留学帰りポスドクの候補者(いずれも3月修了・満了予定)には、この期に及んでも採否の結果すら伝えられず、実に心苦しい。欧州の共同研究者からは、我が国の政策自体を訝しがる声も。

「一般国民が読んで研究内容が分かるような書類の提出を、5600人すべての応募者に要請しようと考えている」は過剰コストじゃないか?

和田政務官に対して懸念を示す声も。

この政務官氏は、東大法学部出身の元大蔵官僚だったのか。科学技術政策担当として適任なんだろうか。

いうまでもなく、法学部出身者でも、科学技術政策に必要な資質と見識を備えた人は存在しうるし、現にいるわけだけど、この方のexpertiseはそっち向きではないだろうな。

和田隆志議員のホームページ。

いずれにせよ

「一般国民にも研究内容が分かる書類」は、ピアレヴューでスクリーニングした後、最終選考段階で課す程度でいいだろうに。勿論最初から全応募者に課す助成金があってもいいが、少なくとも今回は後出しジャンケンすぎる。

と指摘されているように、問題はあとから条件が付け足されたことだ。

研究予算の使い道や成果に対する責任はあるにせよ、科学者コミュニティを混乱に陥れているのは事実だ。まずはこの件に対する情報収集をすすめていきたい。